知らない道

今の地域に何十年と住んでいても

いまだに通ったことのない小道がいくつもある

ほとんど毎日がルーティーンの日々だと

「いつもここを右に曲がって」

を変える特別な用事が無い限り

決して「左」に行くことは無かったから

子ども時代から住んでいた街なら

ご近所の路地という路地も

くまなく探索していただろうけど

大人になってから住み始めた場所では

何年たっても 余計な行動は取らないものだ

今日ふと

ちょっとしたお使いの帰り道

こっちに行ってみようかな?って

初めての知らない道を通った

当然 まったく知らない訳ではない

道の存在自体は知っているし

別の角度から見える

その道に面している

建物や土地も知ってはいる

「お邪魔します」

じゃあないけれど

初めて足を踏み入れた未踏の道...

そこには

当然と言えば当然だが

新しい景色が広がる

知っていたはずの建物や土地も

見る角度が違えば

違うものに見えてくる

また

見えないものも

見えてくる

何十年も誰も足を踏み入れたことが無いような

雑草が生い茂った空き地

ここは もう数十年前から

道路建設予定地として

誰にも利用されていないままの場所だから

雑草が自然のままなのだ

その横には

古い木が2本 並んで立っていて

見たこともないような鳥が

キーキー

不思議な鳴き声で鳴いていた

近くにあるけど

知らなかった世界

近くにあるけど

知らなかった道

別に世界の果てまで行かなくとも

こんな身近にも

まだまだ知らない世界が

こんなにも あった

そんな新鮮を感じた

夏の夕暮れ