9月の。

9月に観たのは『ブランデッド』『20センチュリー・ウーマン』『シークレット・オブ・ハロウィン』の3本。

●『ブランデッド』

ソ連崩壊で西側の文化と商品が流れ込むモスクワ。広告業界の世界的権威が仕掛ける計画に利用されて全てを失い、世界を変えて仕舞えるマーケティングの恐ろしさに打ちのめされる若き広告マン。彼は夢のお告げに従って異能力を手に入れるが……的なお話。

彼が目覚めたのは『マーケティングを可視化する』力。購買欲が小さなバケモノとなって身体から湧き出し、そのヒトを店へと引き込む。欲が満たされるとバケモノは身体から離れ、店の屋上のばかでかい醜悪なバケモノに合流。欲は次々と湧き、バケモノはどんどん肥え太る。このビジュアル化は面白い。

健康志向の高まりで売り上げが鈍ったファストフード業界と広告の重鎮がタッグを組み「何でもするか?」「法の範囲でなら」「それは覚悟とは云えん」てワルダクミ。コレってショッカーの幹部会ぽいな。対する主人公の武器はと云うとネガティヴキャンペーン。ま正直云うとあまり正義っぽくはないのだけれど別にヒーローモノじゃないしね。結果オーライでいいんじゃないかな。ハッピィエンドだったし。

この物語で世界はよくなったのか悪くなったのかそれとも変わらないのかよく判らないラストだったけどまぁ、主人公とその家族は紛れもなくシアワセなのだろうから、うん、それでいいのだよね。多分。

ニウス映像で事態の進展を解説するのはまぁ映画の定番ちゃ定番だけど、コレもそろそろ様変わりしてくのかしらね。て何度か云ってるけどこう云う演出見るたびに思うのだからしょうがないよね。

黒幕が雷に打たれて死ぬのでなく消滅するのって何か、意味があるのかしら。寓話的な。うーん。

●『20センチュリー・ウーマン』

母と息子、下宿人の男女2人、そして息子の幼馴染みの女のなぁなぁな生活。母はまぁ進歩的だがジェネレーションギャップ、思春期の息子が判らない。理解しようと努めて居るが限界を感じ、女2人に「息子を気にかけて」て頼み込む。そんなん。

息子を愛し、彼を理解しようとし、そのために彼の周りの世界を体験し理解しようとする活動的な母。多少ドライ且つ暴走気味ではあるけれどそれも彼女のパーソナリティ、それも愛情のなせる技。

つかね。5人ともヒト付き合いヘタクソなのですよ。それぞれ何かしら問題、欠けた部分を抱えてる。その欠けた足りない部分を補い合い助け合い許容し合い、ぎこちない共存共棲を築いてるけどそれも人生の一時期一部分。それぞれにそれぞれの道があり、それはやがてバラバラに分かれて続いてゆく。

て云うね、観終わってみればその『自分の道』を歩み切った母が、その5人で共棲して居た過去の一時期を中心に5人それぞれの人生を俯瞰するような構成の物語。鑑賞後の印象としてはまぁ、好きな方。

母とウィリアムがアビーの持ってる『自分たちの知らない』今風の音楽を勝手に掛け、息子のケンカ相手が車に書き残した『自分たちには意味の判らない』悪口を乗っけてテキトーに踊るシィンとか、好き。アトやぱウィリアムが母に瞑想を教えるのだけど母、飽きて煙草に火を点け「いいの。つづけて。ちょっと一服するだけだから」て言い放ち、ウィリアムも一本もらって吸うシィンとかも。いい関係でね。

少し複雑な家庭に育った複雑なジュリーにとって、幼馴染みのジェイミーは彼氏ではなかったけど『必要な居場所』だったのだろうね。ジェイミーにそれを維持してやる義理はないのだけど、何かね。何年か先、もう少し成長した彼だったら、そしたら受け止めてあげられたのかも知れないね。判らんけど。

飛行機で海上を飛ぶラストも素敵。アレ、パイロットになりたかった母の『最初の夢』なのだよね。

●『シークレット・オブ・ハロウィン』

昔の友人を捨て、イケてる連中とつるむコトを選んだコーリー。ハロウィンの夜、ひょんなコトからその疎遠になってた旧友ジョナと行動を共にするコトになり、彼の提案する子供の頃の遊び『コキュートス』に踏み込む。そんな一夜のお話。

イケてるメンツのリーダー、ジャンゴ。コーリーは彼の友人として仲間内でもひとつ抜けた地位をゲットしてるのだけど写真が好きで、高校卒業後NYで勉強しようと思って居る。取り寄せた書類を見て父も仲間も、彼はずっとこの街に居るモノだと思ってたと困惑。そんなササクレ、生じた齟齬を土に穴掘って埋めるかのように「今夜はハロウィン。弾けようぜ!」て仮装して街に繰り出し、暴れ廻る彼ら。

ジャンゴはお山の大将、猿山のボス。云うコト聞いてるウチは友だちで仲間だけど逆らうなら容赦しねえ、そんなキャラ。後半コーリーと対立し彼を追い廻すけどラスト近く、コーリーのカメラを返して彼の悲しみをちゃんと受け止めて。しっかり友人してて、うん、このシィンはよかったな。ほっとした。

ホラーだと思って借りたらフツウの青春譚、に見せ掛けたメルヒェンだったと云うちょと複雑な後味の映画。中盤、ジャンゴ達やロマニーにジョナが見えてない?……ん?て辺りでもう結末は何となく判るけど、まぁイキオイで観て仕舞える。大人になれって話なのか童心を保てって話なのかよく判らんけど。

その結末。何かソコハカとない既視感が……て思ったのだけれどそうか、ちょとだけダーク方向に転がした『銀河鉄道の夜』だねコレ。ジョナを『見捨てた』コトが傷になって仕舞ってたコーリーが未来に向かえるように、仲直りしに来たんだね。優しいなジョナ。まぁ自分の心残りでもあったのだろうけど。

正直、パッケージから想像した内容と全く違ったけれど、タイトルも内容と付き合わせるとボンヤリしてて合ってるのかどうかよく判らないけど、までも幻想的でなかなか面白かったですよ。割かし好み。

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月間賞は、うーん、『20センチュリー・ウーマン』かな。

『シークレット・オブ・ハロウィン』も捨てがたいけど。